京都会合

今回は、京都での集まりについてのご報告をしたいと思います。

 

今をさかのぼること2ヶ月。台風の爪痕の残る大きなお寺の山内。日々変わらぬお護摩の声が響く塔頭のお庭も、無残に木が倒れたままでした。

総門から境内に入ることはできても、次の門は閉ざされています。その先はまだ危険で歩くことすらできないとのことでした。

幸い会合の行われる場所の整備はいち早く進んだそうで、美しいお庭を拝観させていただいた後、一同は応接室に通していただきました。

 

東京に続いての参加は、そのお寺の参与を務めていらっしゃるO先生、那須塩原からかけつけてくださったY先生、前回の会場のオーナーM子さん、蚕を飼い、糸を繰ったり紡いだりしてきたH子さん、そして私の5人。

新たに、関西方面にお住いの皆さんもお集まりくださいました。

長良川河畔で旅館業を営むSさん、兵庫から、草月流華道師範のHさん、越前で貴重な和紙を漉いているN子さん、福岡から夜行バスで来てくれたのは、日本で生まれた美しく透明感のある技法の絵画講師のKさん。

加えて、お寺で様々な任務にあたる僧侶の方、秘書の方、寺子屋プロジェクトのリーダーを務めていらっしゃる会計士さんが参加されました。

広い応接室にぐるりと置かれたソファもほぼ満席。東京に続いて大勢の皆さんがご出席くださり、ありがたい限りです。

 

まず、お声がけをさせてもらった私がお一人お一人の紹介をさせていただきましたが、その前に皆さんについて、「物やお金はなくても、出会った人たちが宝物。ここにお集まりいただいたのは、自分の人生においての宝物のような方たちです」とお話ししました。東京会合においでいただいた方々もそうです。本当にそんなふうに思えるのでした。

 

そんな紹介タイムのあとに口火を切ってくれたのはSさんでした。日本の子女が海外に行くと、いかに自分の国を知らないかを思い知らされて帰って来るとのこと。海外では、日本についていろいろな質問を受ける。それに答えられないという恥ずかしい思いをする若い人がとても多いらしいのです。

相手を敬い、自らはへりくだる。対立という考え方はなく、あるのは受け入れ、融和と和合。そんな日本の文化を知らせていく活動が、国の内外でお役に立てる・・その考えはあながち的外れではないと思えるエピソードでした。

現代では、子供はもちろん大人も、日本古来の文化など知らなくても生きていくことはできます。そんな「知らなかったこと」を「知らせる」、つまり発信していけば、「知る」ことができる人たちがたくさんいるのです。

しかしただ知らせるだけではなく、真に心に働きかけ、日常の暮らし、考え方までをいい方向に導いていくことは簡単ではありません。教育を受けた子が親になり、次の子を育てる段階まで待つくらいの気長さが必要な気がしました。

そこに明るい光を射し込ませてくださったのがY先生でした。大人の真剣な態度で、子供は一瞬にして変わりうる・・そんな実例を語ってくださったのです。

まずはやってみること。一歩を踏み出してみること。何事もそれが大切なのでしょう。

 

熱のこもる話し合いの中に、ふっと心和む話題を投げ入れてくださるHさん。長年華道の指導と生け込みのお仕事をなさっています。生徒さんは何人まで、と決めていらっしゃり、その時間は生徒さんにとって、学びの場であると同時に安らぎの場であることがうかがわれます。

そのありかたは、まさに日本文化が心の面においてできることの可能性を見せてもらっているようでした。

 

O先生からは、会場のお寺の考え方、すなわち「お寺は国の宝であり、国民に向けて常に開かれている。心ある人たちといっしょになってよいものを発信していきたい」ということについてのご説明がありました。

それは、残念ながら巷によく聞かれるような、宗教法人の堕落ぶりの逸話とはまったく別次元の清々しいお話でした。

 

そして越前のN子さんは、ご自身が漉いた和紙や、ご家族とともに仕上げていらっしゃる作品を見せてくださり、室内には感嘆の声が上がりました。

美しいもの、魂こもるものは、無条件に人の心を感動に導きます。それも日本文化のなしうる大きな可能性のひとつです。感動の前には、人種も性別も年齢も関係がありません。敵も味方もありません。

 

最後に、九州からかけつけてくれたKさんの、教える立場にして教えられることが多いというおごりのない謙虚な思いが語られ、ここにも、相手を敬い自らはへりくだる日本文化の基本精神を垣間見せていただいたのでした。

 

真摯な話し合いの場では時間が経つのが早いものです。あっという間にお寺の閉門の時刻となり、意義ある会合も幕を閉じました。

車でみえたSさんとN子さんはそれぞれに帰られましたが、私の車でお送りする皆さんは、場所を移して夕食をとりながらまたいろいろなことについて話し続けました。

別れ際には、その場の最年長だったHさんが白髪のY先生の頭をなでつつ「いい子にしていなさいね。」と。笑

反骨精神旺盛なY先生も、はーいとうれしそうに答えていらっしゃいました。

 

まだまだ展樹の会はスタートラインに立ったばかり。こんなすてきな方々と、これから何ができるか、そう考えただけでわくわくしてまいります。

 

この2回の集まりを終え、東京会合から、Y先生がコンサルティングをなさっているお寺に詩吟のKさんに来てもらうことになり、京都会合からは、そのお寺で行われるファミリーフェスタで、養蚕と糸紡ぎのH子さんの講座が計画されることとなりました。

ファミリーフェスタは先日終わりましたが、その講座はとても好評だったそうです。

またN子さんの和紙製品が、とある法要の引物としてお寺に納められることになりました。その美しさと、それを包む折形が、贈る人と贈られる人との間に、目に見えない和の心の橋渡しをしてくれることでしょう。

 

関東・関西2回の会合の簡単な報告を終え、いよいよ次回から、日本文化ひとつひとつから、それに携わる方々から、この場を通じての発信を始めたいと思います。

やがては実際の場においての活動も行ってまいります。ご期待ください。